革ジャンや衿毛ファーなどの変色について

先週のブログで「次回は新作紹介を宿題に…」と書きましたが、今回はお休みして、お問い合わせのあった事を書いてみます。

お客様から「ベージュ色のムートンコートの、襟元ファーと肩部分が、緑色に変色したのですが、修理方法はありますか?」との内容が届きました。

残念ながら結論から言いますと、これらの完全修復は不可能です。

以前にも当ブログで書きましたが、靴やバッグに使用されている革と違い、衣料用の鞣し革は、完全な染色が出来ないのです。

衣料用は、着やすくするために当然柔らかくしなければなりません。

ですから鞣し剤を、靴やバッグのような硬い革を作る時の約半量しか使用することができません。そのように作られた革は、耐熱温度が60度前後で、それ以上になると革の組織にダメージを与えてしまうという欠点があります。

この60度という温度は、あくまでも革を作る工程で濡れている状態での耐熱温度ですから、製品革になった耐熱温度ではありません。

鞣された皮を染色する場合に使用する染料は、酸性染料が使われます。アルカリ性の染料ですと、皮は蛋白質ですから革の組織を分解してしまいます。

この酸性染料を使用して完全な染色をするためには、80度以上の温度で染色しなければならないのですが、鞣された皮は60前後にしか耐えられませんから、皮の染色は60度前後で行います。

極端にいいますと、衣料用の革は、完全な染色が出来ない革なのです。

今回お問い合わせいただいた変色については、ベージュ系の多くは、三原色(赤、黄、青)の組み合わせで作られており、そのうちの赤系の1色が、なんらかの外的影響(紫外線、酸性雨、手入れ剤)を受け、染料の移行や破壊が起こり、残された黄色と青の染料でグリーン系に変色したものと考えられます。

これらの色変化は受ける外的影響により、ピンクに変色した事例もあります。

いずれにせよ、このような問題を防ぐためには、シーズン中も含めて、洋服ダンスなどの紫外線にあたらない場所での保管が大切です。

また手入れ剤などを使用する場合は、必ず前立て裏など、トラブルになっても構わない場所でテストしてから使用することが大事になります。

近頃では製革時に使用する紫外線吸収剤や酸化による退色を防ぐ酸化防止剤もでてきていますが、諸事情でまだ一般的な使用には至っていない現状です。

そのため、今回のご質問いただいたお客様の製品はニチワレリューム革ジャンではありませんでしたが、これはメーカーによって発生するしないではなく、ニチワレリュームを含むどのメーカーの製品にしても起こりうる症状です。

変色での革部分やファーの品質にはとくに問題はありませんので、このような革の特性をご理解いただき、お持ちの革ジャンに多少の色あせが発生しても、それも味わいとして引き続きご愛用していただきたいと思います。

ファーの部分を除いて、革の色あせは多少目立たなくする修復は可能かと思われますので、その場合は一度専門のクリーニング店にご相談ください。

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