一カ月ほど前の事ですが、旧ニチワ時代も含めてニチワのレザー製品を15着所有されているお客様から、ディアスキンと薄手のシャツタイプレザーを発売して欲しいとのメールを頂戴しました。
結論から申し上げますと、この秋はどちらのスタイルも残念ながら販売は予定しておりません。
ですが、この様なご意見はとてもありがたく、また弊社のレザーを気に入ってくださったお客様からのご要望ですので、是非今後の参考にしていきたいと思っています。
実は、他のお客様からも同様のご意見を頂戴したことがあります。
なかでも、旧ニチワ時代のお客様から多いご要望が、ディアのレザージャケットやレザーコート。
一般的にメス鹿を加工したディアスキンは、バックスキンといわれるオス鹿に比べて繊細で、とても柔らかくなめらかですが、生産量が少なく、革製品の中でもとても貴重で高価な革といえます。
毛皮と違い革製品が動物愛護に引っかからないのは、食用の革を使っているからですが、ラムや牛に比べ、鹿肉の消費量がそれほど多くないこと、また生体時のキズが多いというデメリットも、ディアスキンの生産量を少なくしている原因かもしれません。
そんな高価で貴重な鹿革ですが、ニチワ時代は、レザージャケットやレザーハーフコートなど、どのアイテムも常に売り上げ上位に入る人気商品であり、根強いファンが多いアイテムなので、当然ニチワレリュームでも鹿革アイテムを企画するべく、レリューム発足当時から検討はしてきました。
ところがどうしてもできない理由がありました。それは革値がとても高いこと。
革はスキアーフィート(約30㎝×30㎝の大きさ)という単位で価格提示されるのですが、今から10~15年前の相場に比べますと、その価格は倍以上に高騰し、一時は3倍の価格になった事もありました。
メンズのレザージャケットやレザーのハーフコートは、1着辺り40~45スキアーフィート分の革を使用しますが、裁断では傷の無いところを選んで裁断しますので、革の端切れロスも多くなり、当然その分も売価に反映されてしまいます。
つまり、ニチワ時代と同じクオリティの鹿革を使用して販売する場合は、大よそですが1着15~20万と高額になってしまうことから、これまで仕方なくディアースキンを断念してきました。
それでも実は2年ほど前に、ニチワ時代と同じクオリティながら傷が多いために安く提供できるディアスキンがあるとの情報が入り、それなら売価も合いそうとの事で急遽革を仕入れたことがありました。
しかし残念なことに、届いたディアースキンは私たちの想像をはるかに超える傷の多さで、傷をはじくとレザージャケットやレザーコートを作り上げるのはとても困難な状態でした。
結局その革は、傷を取り除いた面積でも作れるディアスキンの手袋を生産することに。
その結果小物とはいえ、久しぶりのディア製品であること、また傷を避ければクオリティの高い革でしたので、メンズ、レディス共に大変ヒットしましたが、それでもアウターレザーを作る希望が消えることはありませんでした。
ニチワ時代を知るお客様からは、とても人気で支持率の高いディアスキン。
残念なことに今年も革値は高額なままでしたが、安く仕入れられるチャンスがあればと、各国のタンナーとは常に連携をとって情報収集していますので、生産可能な革が入荷した時は、当サイトでもご報告したいと思います。
もちろん、革値の安いディアースキンが全く存在しない訳ではありません。
ただ、ニチワのディアを求めるお客様もそうですが、私達もニチワ時代のクオリティ以下の物を無理して仕入れるつもりはなく、レザー専門店として、今迄提供してきたラム革や牛革同様のスキンクオリティと売価バランスを守りながら、これからも革探しをしていくつもりです。