4週間前のブログを閲覧下さったお客様から、タイトルそのまんまのご質問をいただきました。
ブログを読んで、陰干ししようとクローゼットから革ジャンを出したら、表面がすでに白かったらしく、ニチワ製品ではないけど対処方を教えて下さいと。
えっ、ニチワレリュームの商品じゃないの?
な~んて。
全然オッケーです。
レザーのご質問でしたら他社製品だろうが関係ありません。
メールでもお電話でも革のことでしたらニチワレリュームまでご質問ください。
今回のご質問は写真をメールして下さったので、まずは送っていただいた革ジャンの写真を確認。
その後、お客様にあるテストをおこなっていただきました結果、革の表面に付着した白い物体はカビではなく、スピューという革独特の油が浮き出たものでした。
「スピュー?」
急に言われても分からないですよね。
スピューとは大きく分けてファットスピューとソルトスピューがあります。
革は鞣しの段階で素材その物が腐らない様、一度皮に含まれる動物の脂肪分を全て抜き出します。
脂肪を取り除くと皮がカサつきますので、その後、脂肪の代わりに加脂剤という人工油を含ませます。
ところが鞣し後、完全に除去できなかった脂肪や代わりに加えた加脂剤が毛穴を通して革の表面に白く浮き出てくることがあります。
これがいわゆる「ファットスピュー」です。
そして動物の革を鞣し工場に移動する時に、皮が腐らない様に原皮を塩漬けにしてから運びます。
塩は皮を鞣す前に全て洗い落とすのですが、完全に落とし切れずに残った少量の塩が、製品になってから表面に浮き出て白くなる事があります。
これが「ソルトスピュー」です。
ソルトスピューの場合ですが、塩は水に溶けますので、水分を含んだ布で拭けば表面の白浮きは消えてくれます。
しかしファットスピューは、個体差のある動物の革ゆえ、製品によってはどうしても浮き出てくる物が存在します。
革のカバンや革財布などでは、新品時にこの表面浮いた脂も特徴にして販売する物もありますが、レザーウェアではなかなかそうはいきません。
ただ、カビと違ってスピューは乾いたタオルで乾拭きをすれば取り除けますので心配する必要はありません。
今回ご質問いただいたお客様の革ジャンが、テスト結果でスピューと判明したと書きましたが、スピューかどうかの見分け方として、ドライヤーなどで熱風を吹き付けつける方法があります。
こうする事で、表面の白い物が熱風で溶けたらファットスピューだという事が分かります。
例をあげるなら、冷めたすき焼きや豚角煮の表面に固まった白い脂が、温め直すことで溶けるのと同じといったらいいのでしょうか。
ですので、ファットスピューでしたら温めた瞬間にタオルで拭き取れば問題ありません。
ただし表面を拭き取ったとしても、繊維の内側に残っている脂が再度浮き出てくる事もありますので、カビ同様に根気が必要なケースもあります。
また至近距離で熱風を長時間当てますと、革事態にダメージを与える危険性もありますので、当てる時は20~30㎝程度離して、なるべく短時間で処理するように心がけてください。
他にはファットもソルトも、軽い豚毛ブラシ等で軽めにブラッシングをするだけで、どちらのスピューも取り除ける場合がございます。
これらの方法を試されて、それでも取れない場合はカビの可能性も考えられます。
今回ご質問の方はファットスピューでしたのでドライヤーの熱風で解決ができました。
皆さんもレザーウェアをクローゼットから出した時に「あれっ?カビか」と思ったら、一度試してみては如何でしょう。